再建築不可物件のリフォームで“資金を通す”方法

再建築不可物件のリフォームで“資金を通す”ための現実的ルートを、優先順でまとめた実務ガイドです。結論から言うと、①再建築可へ格上げ、②別担保で借りる、③リフォームローン(担保/無担保)、④事業性(賃貸)で評価の順で検討するのが王道です。


まず押さえる前提(銀行が嫌がる理由)

  • 担保価値が低い/流動性が低い:滅失すると同規模で建て直せない=売却時の回収力が弱い。

  • 工事内容に法規リスク:確認申請が必要な工事(構造に係る増改築等)は再建築不可=原則NGになり得る。
    → よって、法規是正の見込み or 別担保 or 短期・少額・金利高のいずれかで突破する。


ルートA|「再建築可」に変えてから借りる(最有力)

  1. 接道・道路種別の役所調査(建基法42条:道路種別/幅員/2m接道)

  2. セットバックで2m接道を確保できるかの検討(要:後退部分の所有/使用同意

  3. 43条但し書き許可(通路確保・隣地同意・位置指定道路の新設等)で再建築“可能”にする計画

  4. 行政と事前協議の記録是正工事の工程表・見積を用意

  5. これらをパッケージ化して、地銀・信金へ相談(“許可後は通常ローン扱い”を狙う)

ポイント:**「許可取得→資金実行」**の条件付ローン(つなぎ)にしてもらう交渉が現実的。フラット35はハードル高、地銀・信金が本命。


ルートB|別担保(共同担保・物上保証)で通す

  • 自宅・親族不動産・保有マンション等を共同担保に入れて、対象物件の担保評価不足を補填。

  • 第2順位抵当や**保証人(物上保証人)**を組み合わせるケースも。

  • 融資種別は住宅ローン(居住用) or リフォームローン(有担保)

現実に最も通りやすい。返済に無理のない範囲で担保余力があるかが鍵。


ルートC|リフォームローン(担保/無担保)

  • 無担保型:上限300~1,000万円、金利高め、最長10~15年。スピードは速い。

  • 有担保型:上限1,500万円~、金利は下がるが審査は厳しめ。

  • ノンバンクの不動産担保ローン:金利高・諸費用多だが、短期で工事→価値向上→借換の“ステップファイナンス”として使う手も。

**確認申請不要の工事(修繕・模様替えの範囲)**に絞れば、法規リスクを低減でき審査が通りやすい。


ルートD|事業性(アパートローン型)で評価してもらう

  • 賃貸化して家賃収支を提示。個人向け住宅ローンが難しくても、収益還元で評価する枠が一部の地銀・信金にある。

  • 必須:賃料査定/稼働計画/運営費、出口(長期保有or売却)を明記。


銀行提出パッケージ(これがあると通りやすい)

  1. 役所調査一式:道路台帳、公図・地積測量図、建築指導課ヒアリング記録、43条許可の可否見解、必要なら私道協定書・掘削承諾

  2. 法規に適合する工事範囲の特定

    • 〈OK〉内装・設備更新、断熱改修(構造非干渉)、窓の内窓、屋根・外壁の大規模の修繕

    • 〈要注意〉構造耐力上主要な部分に係る工事、増築、用途変更(規模次第)→確認申請が絡むなら不可の恐れ

  3. 工事計画:工程・仕様・見積(内訳)、写真付きBefore/Afterプラン、雨仕舞・防水・断熱など性能向上の根拠

  4. 資金計画:自己資金、借入額、諸費用、将来の借換シナリオ(是正後の通常ローンへ移行)

  5. 出口戦略:居住継続/賃貸活用/売却見込み。売却なら再建築不可のディスカウントを織り込んだ試算。


工事の“やっていい/ダメかも”早見

  • OK(申請不要の範囲):内装フル、配管交換、キッチン/浴室/トイレ更新、断熱内張り、内窓、屋根葺替(構造非干渉)、外壁塗装・張替(構造非干渉)

  • NG/要確認:増築、主要構造の変更、間取り変更で耐力壁を撤去、サンルーム増築、用途変更(一定規模)
    → 設計者が**「確認申請不要証明(適法性メモ)」**を添えると審査がスムーズ。


申し込みの順序(実務フロー)

  1. 役所・法務の一次調査(道路/接道、都市計画、斜面・擁壁、越境、上下水・ガス)

  2. 工事の適法範囲を確定(確認申請の要否を判定)

  3. 資金ルートの当たり付け(A→B→C→Dの順で打診)

  4. 見積・工程・写真付き計画書を整備

  5. 金融機関へ事前審査(条件付承認を狙う)

  6. 必要に応じてセットバック工事・同意書集め

  7. 本申込→契約→着工(中間・完了写真を残す)

  8. 借換/本融資(是正後に金利の低い枠へ移行)


金融機関への“通りやすい”説明トーク例

  • 確認申請不要の修繕範囲で性能向上(窓・断熱・雨仕舞)に限定。工事後の保全性が高い

  • 43条許可 or セットバックの見込みあり。許可取得後に通常ローンへ借換前提」

  • 別担保で担保余力を確保」

  • 賃料査定を添付し、最悪は賃貸運用で返済可能


リスクと注意

  • 保険・災害:滅失時は建替不可=再取得コストが重い。火災・地震保険の付保条件を確認。

  • 違法増築の是正:既存不適格はOKでも違反建築は×。まず法規クリアを。

  • 売却流動性:現金買い比率が高く、ディスカウントは**20~40%**想定で試算を。


まとめ(戦略の型)

  1. 可能なら**「再建築可化(43条/セットバック)」**を最優先で筋を作る。

  2. 難しければ別担保で通し、確認不要の修繕・性能向上に絞る。

  3. 少額なら無担保リフォームローン、規模が大きければ有担保型ノンバンク→借換

  4. 将来は借換 or 賃貸運用の出口を、最初から資料化して提示。