中古住宅を買う前に必ず読むガイド——失敗しないための実践チェックリスト付き
結論(先に要点)
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立地と法規→建物の健全性→総額と運用の順で判断するのが最短ルート。
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“見た目”よりも構造(耐震)・外皮(断熱/雨仕舞)・配管が命。
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価格だけで決めず、**購入後に必ず発生する費用(修繕・保険・税金・リノベ)**まで含めて総額で比較。
1. まずは「買っていい土地」かを確認(法規・環境)
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接道義務:幅4m以上の道路に2m以上接しているか。セットバックの要否も確認。
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用途地域・防火指定:増改築や外装材に影響。準防火/法22条区域は仕様が変わります。
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既存不適格 vs 違反建築:法改正で合わない「既存不適格」は売買OKだが、違反増築はローン・保険・将来価値に致命傷。
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地盤・ハザード:液状化・浸水・土砂警戒の可能性。自治体ハザード図+近隣聞き取り。
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境界・越境:確定測量図の有無、塀や樹木・雨樋の越境トラブルを事前解消。
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インフラ:上水/下水/ガスの引込径・老朽度、個別浄化槽の維持費。
2. 建物の“要”を見る(戸建・マンション共通)
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耐震:1981年(新耐震)・2000年(接合金物/壁量の考え方強化)が目安。評点1.0以上を最低ライン、1.25以上なら安心度UP。
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雨仕舞:屋根・外壁・サッシの取り合い、シーリングの劣化。水の侵入=家の寿命を縮める最大要因。
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断熱・気密:単板ガラス/アルミサッシは結露・寒さの原因。内窓や樹脂サッシ化の難易度を確認。
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配管:給水・給湯・排水の材質と更新履歴。漏水歴や床下点検口の有無。
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電気:分電盤容量・アース・アリミド/古い配線。IH/EV/太陽光の増設余地。
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シロアリ・腐朽:土台/柱脚/浴室まわり、床の“ふわつき”、束の腐食、基礎ひび(幅/方向)。
3. マンション特有のチェック
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管理力:長期修繕計画の実効性、修繕積立金の水準と滞納率。直近の大規模修繕履歴(屋上防水/外壁/配管)。
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耐震・構造:新耐震/旧耐震、耐震改修の有無、エキスパンションジョイント周りの劣化。
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共用部ルール:サッシ・玄関ドアは共用扱いが多く、勝手に交換不可。専用庭・バルコニーの使用細則も確認。
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上下左右の生活音:昼夜2回の内見が理想。配管縦管の近接は排水音に注意。
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将来コスト:エレベーター更新・受水槽・インターホン更新の積立見込み。
4. 戸建特有のチェック
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屋根材:重い瓦→地震時の負担増。軽量化余地と雨仕舞ディテール。
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基礎:ヘアークラックは経年、貫通/段差・不同沈下は要精査。床下湿気対策(防湿シート・換気)。
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外構・擁壁:宅地造成規制・古い擁壁(石積/コンクリ)の安全性。車の出し入れ動線。
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増築履歴:サンルーム等の違反増築は要是正。平面図と現況の不一致があれば即確認。
5. 資金計画は「物件価格+α」で考える
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購入時:仲介手数料、登記、抵当権、火災・地震保険、司法書士、ローン費用、固定資産税等清算。
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入居前:基本リノベ費(80〜150㎡:800〜1,500万円目安/戸建1,000〜2,000万円目安)、家電・家具、引越し。
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継続費:修繕・点検、マンションなら管理費/積立金。
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バッファ:見積総額の10〜15%は予備に。開けてびっくり(配管腐食等)に備える。
コツ:**「物件7:改修3」〜「6:4」**の配分が、体感と将来価値のバランスが良いことが多い。
6. ローン・保険・制度の考え方(年度で変わるため方針だけ)
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ローン:団信条件、繰上げ返済手数料、保証料 vs 事務手数料型。
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保険:火災(建物評価・再調達価額)、地震(免責・費用保険)、水災・水濡れの特約。
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各種制度:住宅関連の税制・補助は年度で条件が変わるため、最新条件は購入前に確認。
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瑕疵保険:既存住宅売買の瑕疵保険に入れると、ローン可否や減税の面で有利な場合あり。
7. 内見〜契約〜引渡しの実務フロー
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一次選定:立地・法規・相場を地図+レインジで把握
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内見(昼夜/平日休日):音・光・風・匂い・勾配・駐車動線
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ホームインスペクション:第三者調査+床下・小屋裏の点検
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概算リノベ見積:耐震×断熱×雨仕舞×配管を優先に2プラン(標準/性能強化)
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価格交渉:調査結果を根拠に是正・値引き・引渡条件(残置物処理/越境解消)を整理
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ローン/保険/スケジュール確定:引渡しから工事着工までの段取り
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最終確認:計測・採寸、追加工事の見積反映
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引渡し:鍵・保証書・設備説明、計器番号控え
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入居前工事:解体→中間検査(気密/金物/防水)→最終手直し
8. リノベの優先順位(費用対効果の高い順)
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窓(樹脂内窓/交換・玄関断熱):断熱+防音+結露対策=体感に直結
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気流止め+天井/床断熱:温度ムラを根本から削減
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耐震バランス+屋根軽量化:地震時の安心
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雨仕舞ディテール是正:水の侵入を止める
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回遊動線・収納・照明(多点配灯+調光):暮らしの質を底上げ
9. 初心者向け「即使えるチェックリスト」
□ 法規:接道2m/道路種別/用途地域/防火指定/建ぺい・容積/既存不適格の有無
□ 環境:ハザード/騒音・振動/日当たり・眺望/近隣施設・学校
□ 建物:屋根・外壁・サッシ/基礎ひび/床の沈み/天井雨染み/配管更新履歴
□ マンション:管理状態/長期修繕計画/積立金水準/規約/直近修繕履歴
□ 戸建:白蟻・腐朽/床下湿気/擁壁・外構の安全性
□ お金:購入諸費用/リノベ費/保険/税金/予備費10〜15%
□ スケジュール:引渡→工事→入居の工程表
□ 契約:付帯設備表/物件状況報告書/是正・残置物の取り決め
10. まとめ
中古住宅は“直せば伸びる”余白がある資産。
だからこそ、法規・構造・外皮・配管の基礎体力を見極めて、総額で判断するのが勝ち筋です。見た目は最後でOK。耐震と断熱、雨仕舞に先行投資し、暮らしの質と将来価値を同時に上げましょう。
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