リフォーム会社の営業マンが本音で解説——「リフォームとリノベの違い」と「失敗しない会社の選び方」
現場を歩く営業マンの視点で、リフォーム/リノベーションの違いと、良い会社の見分け方を実務目線でまとめました。検索で探している方が最短で判断できるよう、見積りの比較方法・マンション/戸建ての注意点・工期の考え方・よくある失敗と回避策まで網羅します。
デザインも性能向上も、どちらも大切に —— その前提でお話しします。
目次
リフォームとリノベーションの違い
営業の現場でまず整理するのがここです。
リフォームは“直す・更新する”。古くなった設備の交換や内装のやり替えが中心で、短工期・局所費用で収まりやすいのが特徴です。
リノベーションは“つくり替える”。間取りや配管、断熱・換気・照明計画まで踏み込んで暮らしの体験そのものを刷新します。設計時間も工期も、リフォームより長くなりがちです。
現場の肌感で言うと、「不具合の修繕・機器入替」→リフォーム、「動線/明るさ/温熱/静音/収納の根本改善」→リノベ。ここが混ざると、見積りの前提がブレます。
どちらが自分向き?判断の軸
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目的:壊れた・古いを“正常化”したい → リフォーム / 生活の質を“再設計”したい → リノベ
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範囲:設備交換・表層中心 → リフォーム / 間取り・配管・性能・意匠まで → リノベ
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時間とコスト:短工期・低〜中コスト → リフォーム / 設計+中〜長工期・中〜高コスト → リノベ
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法規:構造や増築に触れない → 概ね申請不要 / 構造・増築・用途変更 → 申請が絡む可能性
「今の不便の正体」と「理想の1日」を言語化すると、自分がどちらを選ぶべきか自然に定まります。
リフォーム会社の選び方(部分更新・設備交換中心)
3-1. 初回面談で見るべき“会話の質”
営業が不便の正体(暑い寒い・におい・暗さ・片付かない)を引き出せるか。単なる機器の置き換えではなく、換気・電気容量・下地の状態に触れてくる会社は現場力があります。
3-2. 現地調査のチェックポイント
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床下・天井裏・分電盤・配管まで見る
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写真付き調査レポートを出す
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マンションの申請・搬入経路・作業時間に詳しい
→ これができる会社は、解体後の“想定外”を減らせます。
3-3. 製品選定は「清掃性・耐久・静音」を軸に
キッチン/浴室/トイレ/洗面はメーカー名より仕様の積み上げで価格が動きます。必要十分の機能と、お手入れのしやすさ、長持ち度で選ぶのが現実解。
3-4. 契約とアフター
工事範囲・工程・支払い・変更合意の方法(書面/メール)・保証が明文化されているか。アフターの連絡窓口が一本化されているかも重要です。
リノベーション会社の選び方(間取り・性能・意匠の再設計)
4-1. 提案の“深さ”を見る
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要件定義→プラン→根拠の流れがある
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平面だけでなく、断面・動線・収納運用・照明回路まで語れる
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性能は断熱・気密・換気・耐震を数値やディテールで説明できる
4-2. 設計・監理・施工の線引き
設計費(基本/実施)と監理の頻度、中間検査(気密・金物・防水)をどこで入れるかが明確だと、工事の質は安定します。
4-3. デザインと性能は“両輪”
見た目を磨くほど、静けさ・室温のまろやかさ・明るさが欠かせなくなる。デザインも性能向上も、どちらも本気で扱う会社を選ぶと暮らしの満足が長持ちします。
マンション工事の注意点(規約・配管・遮音)
営業が最初に確認するのは管理規約と工事申請。
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専有/共用の線引き(サッシ・玄関ドアは共用扱いが多い)
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作業時間・搬入ルート・エレベーター養生
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二重床の高さ・給排水の勾配・縦横配管
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遮音等級と在宅ワーク時の音対策(吸音・内窓)
ここが曖昧なまま進むと、申請NGや工期遅延につながります。
戸建て工事の注意点(耐震・断熱・雨仕舞)
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耐震:壁量だけでなく直下率・ねじれ・金物連続をバランス設計
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断熱:窓性能に加え気流の抜けを抑え、天井/床の連続性を確保
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雨仕舞:屋根・外壁・開口部の取り合いディテールを図と写真で共有
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屋根重量:軽量化は耐震にも効きます
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外構動線:駐車の切り返し、雨の日の帰宅動線、玄関〜手洗い〜収納の一筆書き
営業はこれらを見積りの前提に織り込む役。ここが曖昧だと、追加費用とモヤモヤの温床になります。
相見積りの“同条件比較”テンプレ
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工事範囲:解体・下地補修・配管/電気・内装・処分まで文章で固定
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製品仕様:サイズ(例:I型2550mm)・グレード・色柄を明記
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周辺部材:キッチンパネル、レンジフード、食洗機の有無・容量
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現場手当:養生・搬入・駐車・共用部申請を項目化
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工程表:騒音工程・検査タイミング(気密/金物/防水)を表示
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支払い条件:着手・中間・完了、変更合意の手順(書面/メール)
→ ここまで揃えると、金額差=内容差として比較できます。営業としても、このフォーマットで話せる相手は信頼できます。
工期とスケジュールの考え方(営業の段取り術)
工程表はカレンダーではなくシナリオです。
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近隣行事やマンション理事会、連休を避けて騒音工程を配置
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搬入車両の導線・共用部養生の着脱タイミングを先に決める
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住みながら工事 vs 短期仮住まいのコストとストレスを比較提案
引き渡しは“終わり”ではなく“始まり”。季節が変わって気づく微調整まで見据え、連絡一本で動ける体制かどうかが、いい会社の証拠です。
よくある失敗と回避策(営業の現場で起きること)
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写真は綺麗だが、暑い・寒い・においが残る
→ 仕様決めの前に窓性能・換気・照明の運用までを計画。意匠とセットで。 -
相見積りがバラバラで比較不能
→ 上の同条件テンプレで揃える。金額の差は含まれる作業の厚みに還元できるように。 -
マンション規約でNGが露見
→ 申請ルール、専有/共用の線引き、作業時間や搬入経路を初回に確認。 -
追加費用トラブル
→ 変更合意のフロー(書面/メール)と単価表を契約前に。 -
工期遅延
→ 近隣・申請・搬入の制約を工程に最初から織り込む。検査と是正のバッファ確保。
FAQ:よくある質問と答え(短答)
Q. 何社くらい相見積りすれば良い?
A. 2~3社で十分。重要なのは同条件化。範囲・仕様・工程・申請費用まで揃えて比較しましょう。
Q. 住みながら工事は可能?
A. 部分は可能。スケルトンや配管更新、耐震補強などは短期仮住まいが品質・工期・安全の面で有利。
Q. 価格を抑えるコツは?
A. 使わないオプションを外し、清掃性・耐久・静音に効く要素へ投資。面材は一段落としても、照明と納まりで十分洗練できます。
Q. デザインと性能、どっちを優先?
A. 両方大切。見た目が上がるほど、静けさ・室温・明るさの基礎体力が効いてきます。バランス良く。
まとめ:会社選びは“会話の質×調査の質×透明性”
良い会社は、初回面談の会話の質が高く、現地調査が写真と数値で具体的で、見積りの前提が透明です。工程は近隣と暮らしに配慮したシナリオになっていて、引き渡し後は微調整に素早く応える。
そして提案は、デザインも性能向上も、どちらも本気。このスタンスで選べば、完成後の満足は長持ちします。



